道内の生息状況

生息河川の状況はさらに厳しく

イトウは道内の11河川水系に生息し、12個体群を形成しています。この11の生息河川は、大きく次の3つに分類することができます。

  1. ①もっとも生息数が多い道北地域の河川(天塩川、猿払川など)
  2. ②絶滅に至った河川もあるが、まだいくつかの生息河川が残る道東地域の河川(別寒辺牛川など)
  3. ③人為的に陸封されたイトウの個体群が残るダム湖(貯水池)とその流入河川(石狩川水系雨竜川、空知川など)

この中で、②の道東地域に残っていた生息河川の状況はさらに厳しくなり、③の人為的陸封個体群では閉ざされた環境で健全な個体群をいつまで維持できるか疑問が残ります。

12の個体群の生息域をつぶさに見ると、ほとんどの個体群が、釧路湿原、別寒辺牛湿原、風蓮湖・春国岱、サロベツ湿原、雨竜沼湿原、猿払・モケウニ沼湿原などの湿原や、湿原に特有の海跡湖を下流域にもつ河川に生息していることがわかります。イトウが「湿原の魚」といわれる所以といえるでしょう。逆にいうと湿原のない河川では絶滅しており、その理由は「産卵場所を奪う河川の直線化」でご紹介したように、もともと水はけのよい河川では開発が進み、また水はけの悪いかつて湿原を流れていた河川でも直線化によって湿原や海跡湖を失った河川はあります。そのような河川からは次々とイトウが姿を消していったと考えられています。

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