猿払川にイトウが維持されている理由のひとつとして河畔林が健全なまま残されていることをあげましたが、それでは河畔林の役割について見ていきましょう。
エサの供給:河畔林のある水辺では、水域の生態系と陸域の生態系が密接に影響し合い、生物多様性が高くなります。具体的には、河畔林から川に落ちる葉は有機物として水生昆虫のエサになり、その水生昆虫は小魚が食べ、イトウは食物連鎖の頂点としてその小魚を食べます。水生昆虫はイトウの稚魚のエサにもなりますし、樹木から落下してくる陸生の昆虫もエサになります。
日射の遮断:イトウをはじめサケ科の魚類は冷水性です。河畔林は川に覆いかぶさるように枝を伸ばし、川に木陰を作り、真夏には直射日光による水温の上昇からイトウを守ってくれます。
倒流木供給:大きな倒木や流木が川の流れを遮ると、その下流には大きな淵を作ります。この淵は稚魚の隠れ場所や冬を越す際の住処となります。
水質浄化:樹木が土砂の流出を食い止め、川の礫を守ります。礫はイトウが産卵する大切な場所で、河畔林がなくなると川底に土砂が蓄積し、イトウは産卵できなくなります。
猿払川では王子製紙が、広大な流域を占める王子製紙社有林内に「環境保全区」を設定。中・上流域の猿払原野とほとんどの支流で、川の両岸から幅30mの河畔林が保全されることになりました。河畔林には高さが最大で30mの樹木が育ち、保全区では、原則として伐採は行われません。これは、猿払川の河畔林がほとんどまるごと、将来にわたって保全されることを意味します。